第7回「伝統と革新」
またもや間隔あいてしまいました(笑)。
いやね、季節的にビール需要上がりますし、イベントなんかも続きましたし(←言い訳
ということで。
今回は、なんといいますか、当社の基本的スタンスについて語っちゃいたいと思います。
ビール醸造はものづくりです。
より良いものを作ろう、という意志が根底に、常に存在していなければならない、と思います。当たり前ですが。
伝統的製法、なんて言葉があったりします。
それ自体はとても尊いものだと思います。
それは先人たちの苦闘の歴史によって築かれてきた、大切な遺産です。
ただし、ひとたび「伝統的製法を守って」的なことになってくると、はいそこちょっと待った、という気分がこうべをもたげてきます。
伝統的製法ってのは、いわば「基礎」にあたるものではないか、と考えています。
きちんと理解していなければいけない。ちゃんとできなきゃいけない。
けれど、われわれがいるのはものづくりの現場です。ビール醸造の前線にいるのです。すべてのブルワリーは。ブルワーは。
「伝統を守る」という字面はいいですが、それはすなわち進歩から背を向けることに他なりません。
てゆーかですね
デコクションも瓶内二次発酵もドライホッピングも、編み出された当時は「革新」だったのを忘れてはならないと思います。
先人たちが考えに考え、ときに失敗に失意し、そういう苦労を重ねて革新的な製法を産み出し、それが広まって時を経て「伝統的製法」になったんですよね。
ぼくらだって、先人たちと同じように、未来の伝統的製法となるてあろう「革新」を志すのがスジってもんだ、と強く思います。
うちの名物ビールに「とりがらシリーズ」があります。
とりがらエキスが本当に、わりとたっぷり投入してあります。
これ、ふざけてつくったわけではありません。
世にはいわて蔵ビールさんの「オイスタースタウト」やヤッホーさんの「前略sorry」シリーズのように、動物性のアミノ酸を投入したビールが存在します。
どれも美味しく、ソレを投入することでビールに特別な良さが備わるのだとわかります。
うちもやるべきだろう、やるなら鶏だろう、とオーナーが言い出し(←オーナーは現焼鳥やさん)、最初笑っていたのですが、考えてみるとやる価値があると思ってつくったのが「とりがらIPA」でした。
いまは、秋冬バージョンのポーターにもこっそりとりがらエキスを投入しています。
ゲテモノではない、きちんと美味しいビールとして、いまは定期的に仕込んでいます。
得られた効果は、次の通り。
・ビールに複雑さとまろやかさが加わる
・ビールの完成が早まり、1ヶ月半で熟成にも似たニュアンスが得られる。これによって、熟成とホップのフレッシュさという相反した美点を備えたビールをつくることができる
・おそらくはコラーゲンが、ビールの清澄化に寄与してクリアなビールができる
念のため申し加えておきますと、とりがらの味はしません(笑)
最近熱中しているのは「ワールプール65℃ホッピング」で、煮沸終了時ではなく、麦汁を65℃まで冷却してからホップを投入するというものです。
100℃で投入した場合とは残る香り成分が大きく変わるため、ただいまさまざまなホップのニュアンスの変化を確かめています。
なんか凄そうなのは「エキノックス (エクアノット)」。
なんかいつもと全然違う!オレンジがたくさんいる!
あとは、まさに今日樽詰めしたポーターは「水出し」を試しました。
黒い色合いと、カカオやコーヒーっぽさの源であるチョコレートモルトを、前の晩から常温の水に漬けておいて成分を「水出し」し、糖化工程の最後、濾過直前になってから麦汁に投入する、という試みです。
渋み、酸味、鉄っぽさを抑えられるのではないか、と考えてやってみました。
樽詰め時点でのテイスティングでは、かなりいい感じ!
レシピをいじる、新しいホップを使ってみる、なんてのももちろん大切ですけど、ものづくりとしてより大切なのは「どういう方法でつくったらより良いものになるか」という点に知恵を絞ることなんじゃないか、と思います。
当ブルワリーは醸造歴は浅く、また異業種からの参入の素人スタートで、あんまり生意気なこと言える立場じゃないかもしれませんが、でも「守りに入らない」のは貫いていきますぜ!
いやね、うちはヘッドブルワーもオーナーブルワーも人生の折り返し点をすぎた(ぶっちゃけ今年50)オッサンなんですよ!
守りに入ってるほど残り時間がないんですよ!
ええもう開業した瞬間にほんのり後継者問題が浮上ですよ!
というわけで(←脈絡を無視して強引にまとめにかかるサイン)
横浜の南のはずれで革新を旗印に眼を三角にして仕込みに向かうマイクロブルワリーを今後ともよろしくお願いします。
センテンス長い