横浜のクラフトビールメーカー「南横浜ビール研究所」の醸造日記

横浜のマイクロブルワリー+ビアパブ「南横浜ビール研究所」の設立経緯から醸造に奮闘する日々を綴ります

第3回「ホップのブレンドに関する考察」

さて3回目です。
えー、早くも、得た知識を整理して記録に残す「自分用忘備録」みたいになってきました。まあいいか(笑)

ホップをブレンドして使う、というのはどのブルワリーでもとくに疑問なく行われています。もちろん当社もです。それなりの工夫も重ねてきました。
で、さまざまなブレンドを試してきて感じてきたことがあります。
それは、「AとBというホップをブレンドしても、AのフレーバーとBのフレーバーを独立して感じるわけではなく、混ざってCという別のホップになったような結果になる」というものです。
それはあたかも、青の絵の具と黄色の絵の具を混ぜると緑色になる、という感じなのです。

で、いま様々な文献を読み漁って考えています。

ホップのフレーバーを決定づける成分はというと、おもに次の通り。
・ミルセン
・フムレン
・カリオフィレン
・ファルネセン
・リナロール
・ゲラニオール
・ピネン

これらの成分が、あるホップには多く、あるホップには少なく、品種によって異なる比率で含まれているわけです。
ではホップをブレンドするとどうなるかというと、ビールに移るこれらの成分の比率が変化する、変化するだけ、ということになります。
たとえば、アマリロとシトラとカスケードを同じ量だけブレンドして使ったら、足して3で割ったようなフレーバーになるはずです。
この、似たキャラクターの3ホップで作ったビールを飲んだとして、当てられる気はまったくしません(笑)

ただし、なのです。
これらの成分は、それぞれ物理的化学的性質がちがいます。
たとえば、ミルセンなどは煮沸でほとんど揮発しちゃう上に水に溶けにくい。煮沸工程で投入しても、ビールにはほとんど残らないわけです。
ほかにも、ゲラニオールは酵母代謝によってβシトロネロールという好ましいフレーバーを放つものに変わったりします。

整理します。
ブルワーは、これら各成分が持つ特色と性質を理解した上で「このフレーバーを付与するために、この成分を多く持つホップを、ベストの工程・タイミングで投入する」という感じでホップの配合を考えなければならない、ということです。
シトラとシムコとネルソンソーヴィンが好きだから混ぜる、ではアカンのです(←でもきっとそういうの多い)

当社はこれまで、他の多くのブルワリーと同じように、ホップの品種単位でブレンドを考えてきました。
しかし、今後は「ホップに含まれる成分を単位としてブレンドを決定する」というスタンスに変更することにしました。
これによって劇的に美味しくなる、というものではおそらくありません。
しかし、「なんとなく」を排除し、常に明確な意図を持ってビールづくりに励んでいくことは、きっと自分たちのレベルを引き上げてくれると信じます。

なんと、この話、続きます。
これまでは基本編、次回はその一歩先です。
こんなマニアックな内容、需要あるのかな?(笑)
いいのです、自分用アーカイブですし。
ではまた次回!